額面通り

今日はなんでも 正直に

「生活」という焦燥

今日は朝から1986年の音楽を聴いてる。AppleMusicで、1986ヒットソングのプレイリストをさらに自分好みにカスタマイズしたやつ。1986。わたしは12歳で、テレビの中の世界はいつもキラキラしていて、明るい未来しか想像できなかった美しい年。

チェッカーズはSong for USA、CCBは空想kiss。両バンドが音楽番組に出ると、仲が良さそうで好きだった。渡辺英樹テレホンショッキングに出た時、鏡を見ながらやったせいで開けたい方と逆側の耳に穴をあけてしまった話をしていたことを覚えている。「りぼん」が出るのが毎月待ち遠しく、アニメ「タッチ」に夢中で、スタイリッシュな刑事ドラマ*1が好きで、黒縁メガネをかけたピアノマンの事が特別に好きだった。

公団住宅の狭い狭い部屋に住んでいた。狭い狭いDKには大きすぎる、白いダイニングテーブルの上に置いた鏡、その前でドライヤーをかけることの憧れ、ちょっと大人になったような気持ち。ナショナル製の、オレンジ色の重たいドライヤー。ダビングするためのカセットテープは、イトーヨーカドーオリジナルブランドの、ケースの透明にまで色がついているやつ、ひとりで過ごす放課後、ベランダの窓から見える小さな公園、プーマの赤いジャージ、灯油ストーブタンクの上に置かれた重たい黒電話。

「生活」という焦燥を人は皆捨ててゆくの 

贅沢な1980年代よ

愛する人をくじかせないで

永い科学の迷いに 身をくずした戦士か ぼくたちは

ピアノマンが歌っている。さっきプレイリストに入れた1986年リリースのアルバム「AVEC」に入っている、最後の曲、タイトル曲。今歌詞をじっくり読むと、まさに”今”のムードを歌ってるように聞こえるのが不思議だ。意味を考えることもなく、口ずさんでたあの頃。1986。わたしは12歳で、テレビの中の世界はいつもキラキラしていて、明るい未来だけしかなかった美しい年。恋も愛も悲しいことも、なにもかもがまだ始まる前だった頃のこと。

*1:タカとユージのアレ